留学体験記2014
留学体験記 2014 小倉 貴仁【MIT】
留学先:Massachusetts Institute of Technology
期間:2014年10月30日~12月27日
我が原子力システム安全工学研究室では3年前よりアメリカ国内のPurdue大学・Texas A&M大学・ニューヨーク市立大学といった大学へ学生が派遣されてきました.私自身も本研究室への配属を希望した理由として,このように海外留学をすることができるという事が大きかったです.そのため,学部4年時より海外への派遣を希望しており,修士1年時にはMITのDepartment of Nuclear Science and EngineeringのCharles W. Forsberg教授のもとで研究をすることが決まりました.
研修内容としては「Insulation system for the Fluoride-salt-cooled High-temperature Reactor (FHR)」について,文献を収集し様々なオプションの実現性や経済性などについて検討した論文を書くというものでした.この研究には主だった専攻研究が無く,文献を検索する際にも原子力分野のみならず量子力学といった他分野の論文についても理解を深める必要がありました.この作業は想像していたよりも大変で,最も時間を割かれるものでした.しかし,この作業によって概要をつかむ力と逆境に立ち向かう力が養われたと思います.
研究は,週1回のProf. Forsbergとのミーティング・2週間に1回のプロジェクト内でのミーティングを通じて行われました.プロジェクトでのミーティングを通じて強く感じたのは,チームとしての仕事の速さでした.彼らは積極的に意見を交換し情報を共有することで,FHRの実現という大きな目標に向かってものすごいスピードで突き進んでいっていました.これは日本に戻っても見習わなければならない姿勢であると痛感しました.
この留学で学んだことは,自分から動かなければ何も始まらないし変わらないという事です.私がアメリカに到着して数週間の間,オフィスが無く自宅で作業をせざるを得ない状況でした.その間は,週に1通程度オフィスの担当者に確認のメールを送り,その返信を何もせずに待ちつつけるという状況でした.しかし,オフィスの担当者に催促をするようにしたところ,驚くほどすぐにオフィスを使えるようになりました.これを機に自発的に行動することの重要さを痛感し,わからないことがあれば森教授やProf. Forsbergに質問をしたり,ある論文のCo-Authorにコンタクトを取ったり,MIT内の研究者の方を直接伺ったりすることができるようになりました.
また,私の暮らしていたケンブリッジは学研都市であり,治安もよく北大周辺のような暮らしやすさがありました.また,目と鼻の先にボストンがあったため不便なこともなく,息抜きをすることもできました.また,四大プロスポーツ全てのチームがボストンにあり,試合がある日の街は非常に賑やかでした.経済面では,都市部という事もあって物価は多少高いように感じました.家賃は基本的には非常に高いですが,ルームシェアなどを探せば十分安い家もあります.
大学ランキングで上位の大学で研究を出来る機会はめったになく,少しでも興味があるようでしたらいつでも話を聞きに来てください.
留学体験記 2014 奥山 裕太【The University of Chicago】
留学先:The University of Chicago
期間: 2014年10月14日~12月12日
私は約2か月間の海外インターンシップに行かせていただきました。
今回のインターンシップでは、シカゴ大学の中村昇教授にご指導いただき、大気輸送モデリングの研究に携わりました。原子力発電所から放射性物質が拡散してしまった場合、放射性物質がどの地点にどれだけの量が放出されたかを推定する必要があります。推定には、放出された時の風向や濃度といった気象場を正確に推定することや、放出された物質がその気象場にどのように影響されて移流・拡散が行われるかを考える必要があります。そういった気象場や粒子の移流拡散についての理解を深めるとともに、実際にモデリングを行いました。
シカゴ大学は街から列車で約10分、約11km南に位置しています。シカゴは治安が悪いとよく言われ、特に南側は危険だと考えられていますが、夜には大学構内に警備員の方が立っており、無料の夜間バスもあるので、夜遅くまで勉強に励む環境はしっかり整えられていると感じました。
休日には街を見て回ったり、シカゴ内の美術館へ観光に行きました。
英語には苦労しました。最低限のコミュニケーションはとれたものの、私の英語能力の低さから多くの苦労を掛けてしまったと思います。英語で言いたいことをうまく伝えきれなかったことも多く、語学学習が足りなかったことを痛感しました。インターンシップをより良い体験にするために、実際に英語を使える能力を伸ばしておくことは大事なことです。そして、より多くの知識をつけたうえで、それを発信できる能力を持つ必要があると感じました。さまざまな面でより勉強していく必要性を強く感じ、今後の励みになるインターンシップとなりました。
今回のインターンシップでは、多くの貴重な体験をさせていただきました。日本と異なる文化に触れることができたことは、私にとって大きな財産になるのではないかと感じています。本当にありがとうございました。
留学体験記 2014 鴻上 弘毅【Texas A&M University】
留学先:Texas A&M University
期間:2014年10月1日~12月5日
1) インターンシップの内容
Texas A&M UniversityにてKaren Vierow先生が行っているTesting of RCIC Performance for Mark I BWRs under Prolonged Station Blackout Conditionsという研究プロジェクトに参加しました。RCICとは、BWRで用いられる冷却設備の一つであり、交流電源が喪失した場合でも原子炉を冷却可能であるのが特徴です。RCICには大容量のプールがあり、そこへ蒸気を引き込んだ際の温度成層を計測するのがこの研究プロジェクトの主な目的です。私が普段北大で行っているのは主にデータ解析であったので、研究室で実験はしたことがありませんでした。TAMUでの実験設備は非常にスケールが大きいこともあり、初めて実験を行った時のワクワク感や驚きは忘れられません。
また、毎週行われる研究室ミーティングでは各々が取り組んでいる研究プロジェクトの詳細や進捗状況が説明されていました。私はそこで日本語の論文をまとめてプレゼンを行う機会を与えていただきましたが、母国語以外で専門分野の話をする難しさや、どうしたら自身のつたない英語力で相手に理解してもらえるかを考えることが出来ました。
2) アメリカでの生活
アメリカでは当然日本と文化が全く違うので自分がその環境になじめるか心配でしたが、事前にある程度下調べをしていたこともあって、あまり大きなカルチャーショックは感じませんでした。しかし、現地の気候があまりにも北海道と異なり真夏のようであったので、インターンシップ開始後数日は夏バテ気味になってしまうことがありました。
現地ではKaren先生から教えていただいた、大学が運営するゲストアパートメントで滞在していました。少々家賃が高かったものの、スタッフの方が英語の上手くない私にもわかりやすいようにゆっくりと話してくれたり、時には地図やメモ用紙を使って視覚的に伝えてくれたりと大変親切にしていただきました。また、部屋は大きく一通りの家電や食器類などが揃えられており非常に快適な生活を送ることができました。
Karen先生にも親切にしていただき、インターンシップ中2度もご自宅に招いていただいてお食事を頂きました。特に、Thanksgivingに招いていただいた時には大きなターキーが用意されており、目でも舌でもアメリカの伝統文化を楽しむことが出来ました。
3) 学んだこと
上でも少し触れましたが、私はあまり英語が上手くなく最低限のコミュニケーションをとるのがやっとの状態でした。その状態でも一人で2か月間異国での生活を送ることができたのは自分の自信につながりました。しかしそれと同時に、もっと英語が上手くなってネイティブと円滑にコミュニケーションがとりたいとも感じました。現地の学生同士で楽しそうに会話している輪にうまく入れなかったからです。現地の人ともっと意思疎通を行うことができれば、アメリカでの生活がより楽しくなるのではないかと感じました。
4)感想・ひとことメッセージ等
海外インターンは確かにお金もかかるし異国での生活に不安を覚えると思いますが、それだけの価値はあります。私も最初はアメリカの人が怖く英語でのコミュニケーションも不安でしたが、すぐに慣れましたし現地の人は親切な人ばかりでしたので、それほど思い悩む必要はないと思います。
留学体験記 2014 嶋村 和也【CCNY】
留学先:City College of New York
期間:2014年10月1日~12月19日
◯ インターンシップの内容
私は今回のインターンシップで、BWRという原子炉形式での原子炉内の燃料棒バンドル内のボイド分布を、比抵抗トモグラフィ(Electrical Resistance Tomography, ERT)を用いて計測、解析を行いました。ERTは物質の電気抵抗率(導電率)を測定する計測機器であり、水と空気との電気抵抗率の差を求めることにより、水の中のボイド分布を調べます。今まではX線などの放射線によるボイドの計測が行われていましたが、このERTでもボイド分布の計測が可能かどうか調べるということで今回のインターンシップのテーマとして行いました。
◯ アメリカでの生活
世界でも有数の大都市であるニューヨークでは、高層ビル群の立ち並ぶ摩天楼、そして様々な人が入り乱れる様相にとても圧倒されました。特に、自分がゲストハウスに滞在していたクイーンズ、そして大学に登校する際に利用していた地下鉄7番線では、ヒスパニック、中国人、韓国人が乗っている様子を見て、「人種のるつぼ」という風景を感じました。
研究以外の時間では、滞在していたゲストハウスの皆さんと一緒に観光に行ったり、ハロウィーンの日に研究室の方の家に遊びに行ったりと、非常に充実した生活を送れることができました。
英語に関しては、最初はアメリカ特有の英語の速さについていくことができず、何回も繰り返し聞くなどをして、周りに少し迷惑をかけているのではないかと思っていましたが、何度か聞いたりしゃべったりしていくうちに慣れていき、英語である程度表現することができるようになったと思います。このことは、英語を本や学校で学んでいくよりもとても効果的であると実感しました。また、この経験をもとに英語をより深く理解する意欲がでるようになりました。
◯ 学んだこと
今回のインターンシップで一番学んだことは、「異文化への理解」というものです。私は今まで海外には近隣国にしか行ったことがなく、欧米の国に対して自分の英語が通じることができるか、正直不安を感じていました。しかし、この2カ月半にニューヨークに滞在して、そのような不安感は取り除かれ、さらに外国に対するイメージというものをより具体的にとらえることができるようになりました。このような貴重な経験を体験することができて、インターンシップに行って良かったと思っています。
最後にこのような貴重な機会を与えてくださった森治嗣教授およびCCNYの川路正裕教授に深くお礼申しあげます。本当にありがとうございました。また、海外留学に興味のある方はぜひ学生のうちにこのような経験をしておくことをお勧めします。
留学体験記 2014 田尻 裕太郎【Penn State】
留学先:Pennsylvania State University
期間:2014年10月6日~12月23日
◯ インターンシップの内容
ペンシルバニア州立大学のAdvanced Multi-Phase Flow Laboratory(AMFL)に二ヶ月半インターンシップとして参加しました。私は主に、配管の中を通る水と空気の混合流(気液二相流)を測定する実験のお手伝いをし、実験で用いるセンサーの作成をしていました。初めは機器の用途や実験の手順などを一から教えてもらい、実験やセンサーに関する論文を読むことで理解を深めました。実験では三人グループの一員として、円滑に実験が進められるように仲間と話し合い、個々の役割を決めながら実験を行いました。センサーの作成に関しては、初めに手本を見せてもらい、それに則って作成しました。わからないところは適宜聞き、途中で何度も失敗しましたがなんとか期間中に仕上げることができました。
週に一度先生とミーティングをし、進捗報告と次週までの目標計画を話しました。またそれとは別に全体ミーティングにも参加することで、日本とは違った大学の雰囲気を感じました。
◯ アメリカでの生活
私が滞在したところは学園都市で、大学のキャンパス以外は山や田畑くらいしかなく、のどかで住みやすい場所でした。治安の良さは日本と変わりません。札幌と同じような気温ですが、雪はあまり降らないので不便に感じることはありませんでした。宿泊先はホームステイで、気さくなホストマザーやルームメイトと楽しく過ごせました。Thanksgiving Day(感謝祭)では七面鳥や伝統料理が振る舞われ、アメリカの家族の暮らし方を少しではありますが体感することができました。一週間の休みがあったときは、ニューヨークやボストンなど主要な都市をまわり、ここで世界を動かしているのかと肌身で感じてきました。
大学での生活は実験かデスクワークが大半でしたが、昼食や夕食は研究室の仲間と一緒に食べ、くだらない話でよく盛り上がりました。帰国前にはご飯を御馳走してもらったり、バーで楽しく過ごしたり、品物を頂いたりと受け入れて下さった先生をはじめ、親切な仲間に囲まれて充実した日々を送ることができました。
◯ 学んだこと
今回のインターンシップで得た一番の収穫は、自分の行動力次第で相手の気持ちを変えることができるということです。実験を仲間と進めていく際に、初めはわからないことを聞いてばかりで、正直邪魔な存在であったと思います。ただ、私がいたら実験がスムーズに行える、短い時間で終えることができると思ってもらえるようにするために、毎回真剣に取り組み、拙い英語でしたが仲間とのコミュニケーションをはかりました。すると、信頼が芽生えたのか次第に与えられる仕事の量と責任も増えて、実際に実験時間も短くなりました。冗談や馬鹿な事を言い合えるようになったのも仲間との信頼ができたからだと思います。言語も文化も違う環境でも自分の努力次第で変わっていくことができるということを実感しました。
◯ 感想・ひとことメッセージ
日本人がほとんどいない環境に身を置くことで、非日常の生活を送ることができ貴重な経験となりました。具体的に何が成長したかと問われると答えるのは難しいですが、どんな環境でも自分というものを出す、チャレンジするという心意気は渡米前より強くなったと思います。語学力に関していえば、英語が話せることに越したことはありません。会話がスムーズにできればより質の高い内容の話ができますし、あらゆる人との交流の輪が容易に広がります。私自身も英語対策をしっかりやっておけばもっと自分の意見を主張できたと反省しています。ただ、英語があまり話せないからといって海外生活を断念するのではなく、知らない世界でも果敢に飛び込んでいこうという気持ちさえあれば何かしらの成果が得られるはずです。費用や時間の制約はあるかと思いますが、機会があればぜひトライしてください。きっと素敵な生活が待っているはずです。
最後にこのような素晴らしい機会を与えて下さった森先生、三輪先生、キム先生に感謝の意を表します。