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ミッション

2011年3月11日に発生した東北地方太平洋沖地震(東日本大震災)に伴った大津波で,東京電力福島第一原子力発電所は全電源喪失に陥り,1~3号機は全ての原子炉心冷却機能を失って炉心溶融に至りました.日本の原子力安全神話が崩壊した瞬間でした.しかしながら、原子力の安全性研究者は,全電源喪失時に最善の対策をとらなければ,原子炉は早期に炉心溶融事故に至ることを指摘していたのです.

安全に関する研究は,原子力に限らず航空機や新幹線などの領域でも盛んに研究がなされてきました.航空機や新幹線は,安全が確保されなければ,飛ぶ走るという本来の機能を止め着陸し或いは停止することにより,まず安全を確保することができます.一方原子炉は,制御棒或いはホウ酸により核反応を止めた後も,燃料から発生する崩壊熱を冷却しつづけ安全を確保しなければなりません.走りながら安全を確保しなければならないのです.つまり安全を確保するために,飛行機や新幹線よりもより厳しい高度な安全技術が求められています.

原発の大事故の起きる確率は,実は飛行機よりも遙かに小さいと言われています.それでも飛行機は人々に利便性の高い交通手段として受け入れられています.それは,受ける利益が大きく,引き替えに人々が受け入れる潜在的なリスクが十分低いと考えられているから,飛行機や新幹線は安全と考えられているのです.世の中に絶対安全はありえないのです.飛行機や鉄道は,長い歴史の中で大きな事故をいくつも経験してきました.しかし,長年の努力を続け安全確保の思想を確立しリスクを低減した結果,今の姿が有るのです.原子力発電はどうでしょうか.津波による災害に加え原子力災害を被った福島の人々を思えば,原子炉の設計にはより厳しい高度な安全技術が求められているのは明かです.そして原子力発電は,将来にわたって人類に利益をもたらし受け入れられるのでしょうか.

地球誕生から46億年を1年とする地球カレンダーがあります.

calendar

これによれば恐竜は地上に出現したのが師走の月の15日で,生存できたのはおよそ2週間でした.現生人類の出現は大晦日紅白歌合戦が終わった後で,我々の生存はまだ僅かな時間です.エネルギー問題を将来にわたって解決しなければ,我々人類は恐竜より永らえることはできないかも知れないのです.そして,化石燃料は地球カレンダーによればあと1秒でほぼ枯渇するのです.科学技術者の責任として,いま原子力によるエネルギー技術を捨てる選択肢はあり得ないと考えます.福島復興支援とともに,原子力の安全を将来にわたってより厳しい高度な安全技術で達成し,安全で安定なエネルギーを人類に供給すること,これが原子力システム安全工学研究室の達成したい目標であり,ミッションと考えます.

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